サレ妻がサレ夫に転落 ー 報復不倫の連鎖と法的責任

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配偶者の不倫に深く傷つき、「同じことをしてやりたい」と感じたことはありませんか。怒りや孤独から始まる報復不倫は、一時的な感情のはけ口になる一方で、立場を逆転させてしまう危険もはらんでいます。知らないうちに法的責任を負い、慰謝料や交渉で不利になるケースも少なくありません。この記事では、被害者だったはずの立場が加害者へと変わってしまう背景と、その選択がもたらす現実に目を向けていきます。

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配偶者の不倫が発覚したとき、裏切られた怒りと悲しみは計り知れません。「自分だけが我慢するのは不公平だ」「同じ痛みを味わわせてやりたい」という感情から、自分も不倫関係を持ってしまう。いわゆる「報復不倫」や「仕返し不倫」と呼ばれる行為です。

しかし、この選択は新たな法的トラブルを生み、問題をさらに複雑化させる可能性があります。配偶者の不倫で被害者だった人が、気づけば自分も加害者の立場に立たされてしまう。

この記事では、報復不倫の心理的メカニズムと、それがもたらす法的リスクについて詳しく見ていきます。

報復不倫に至る心理プロセス

怒りと正義感の歪み

最初は純粋な怒りから始まります。「あの人がしたんだから、私にも同じ権利がある」という感覚です。法的には何の根拠もない考え方ですが、感情的には理解できる心理状態かもしれません。

配偶者が不倫相手と楽しそうにしている姿を想像するだけで、怒りが増幅していきます。「自分だけが真面目に結婚生活を守っているのは馬鹿らしい」という気持ちが芽生えてくることもあるようです。

自尊心の回復を求めて

配偶者の不倫は、自尊心に大きな傷を与えます。「自分には魅力がないから浮気されたのか」「自分は愛される価値がないのか」という思いに苦しむ人も多いようです。

この傷ついた自尊心を回復するために、別の人から求められたいという欲求が生まれることがあります。「自分もまだ魅力的な存在なんだ」「愛される価値があるんだ」と確認したくなる心理です。

マッチングアプリに登録したり、久しぶりに異性の友人と連絡を取ったりすることから始まるケースも少なくないようです。

孤独と寂しさを埋めるため

配偶者が不倫相手と時間を過ごしている間、家に一人で残された時間の寂しさは想像以上のものかもしれません。特に、夫婦関係が冷え切ってしまった後、会話もなく同じ屋根の下で暮らす孤独感は辛いものです。

この孤独を埋めるために、誰かと繋がりたいという気持ちが強くなることがあるようです。最初は友人として話を聞いてくれる相手を求めただけだったのに、いつの間にか関係が深まってしまうというパターンも見られます。

「どうせ離婚するなら」という諦め

配偶者の不倫で離婚を決意した人の中には、「どうせ終わる結婚なら、もう何をしても同じ」と考える人もいるようです。法的にはまだ婚姻関係が継続している段階でも、心理的には「もう夫婦ではない」と感じてしまうのです。

この段階で別の人と関係を持ってしまうと、法的には自分も不倫をしたことになってしまいます。

法律は感情を考慮してくれない現実

報復不倫をした人の多くが「相手が先にしたのだから」と主張します。しかし、残念ながら法律の世界では、この論理は通用しないことがほとんどです。

「相殺」は認められない

民法では、不貞行為による損害賠償請求は同意なく相殺できないと考えられているため、慰謝料請求権についても相殺が認められない場合があります。つまり、「相手も不倫したのだから、お互い様でチャラ」と考えていても、認められない可能性があります。配偶者が先に不倫をしていたとしても、その後に自分も不倫をすれば、双方が相手に対して慰謝料を請求できる権利を持つことになります。

結果として、両方が加害者であり、同時に被害者でもあるという複雑な状況が生まれます。

「先にやった方が悪い」も通用しない

「最初に裏切ったのは相手だ」という主張も、法的な抗弁としては弱いものです。確かに、配偶者の不倫が先であったという事実が立証できれば、損害額の中で考慮される可能性はあります。

しかし、それによって自分の不貞行為が正当化されるわけではありませんし、夫婦関係がよくなかったことの証左になるため、こちらが請求する慰謝料額の減額にもつながる可能性があります。

慰謝料額への影響は限定的

不倫した時点で相手方の不倫が原因で夫婦関係が悪化していたという事情は、慰謝料の減額事由として考慮される可能性があります。「すでに婚姻関係が破綻していた」と認められれば、慰謝料が低くなることもあるでしょう。

他方で、こちらが請求する慰謝料の中でも、同様に、不倫をするぐらいの夫婦仲であったと判断されて慰謝料が減額される可能性があります。

報復不倫がもたらす複雑な法的状況

報復不倫をしてしまうと、離婚や慰謝料の問題が一気に複雑になります。

有責配偶者となるリスク

最も深刻なのは、自分が「有責配偶者」と認定されるリスクです。有責配偶者とは、婚姻関係を破綻させた主な責任がある配偶者のことです。民法では、有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められないとされています。

不倫の立証責任はこちらが負うため、証拠が十分でなければ、裁判所は認定してくれません。

自分が報復不倫をしたことが証拠上認定された上で、相手方の先の不倫についての証拠が不十分で立証ができなければ、たとえ相手が先に不倫をしたことが真実であったとしても、むしろ、こちらの方が有責配偶者であるとの判断になってしまう可能性があります。

慰謝料請求の応酬

報復不倫が発覚すると、慰謝料請求が複雑になります。お互いが相手に対して慰謝料を請求できる状態になるため、実務的には以下のような展開が考えられます。

夫が妻に100万円の慰謝料を請求し、妻も夫に100万円の慰謝料を請求する。理論上は相殺されて±ゼロになりそうですが、実際にはそう単純ではありません。

不倫の期間、頻度、悪質性などによって、それぞれの慰謝料額が異なるため、結果的にどちらかが差額を支払うことになる場合もあります。また、それぞれの不倫相手も巻き込まれ、4者間で複数の慰謝料請求が飛び交うという、非常に複雑な状況になることもあります。

親権争いでの不利

子どもがいる場合、報復不倫は親権争いで不利に働く可能性があります。裁判所は、子どもの福祉を最優先に考えて親権者を決定します。

不倫に夢中になって子どもの世話が疎かになっていた、不倫相手の家に子どもを連れて行っていた、などの事実があると、親権獲得に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

報復不倫をする前に考えるべきこと

一時的な感情で報復不倫に走る前に、冷静に考えるべきポイントがあります。

本当にしたいのは「仕返し」ではなく「離婚」かもしれない

報復不倫をしたいという気持ちの根底には、「配偶者を傷つけたい」という思いがあるかもしれません。

しかし、本当に必要なのは相手に同じ痛みを与えることではなく、その人との関係を清算することではないでしょうか。離婚という選択肢を真剣に検討する方が、建設的な解決に繋がる可能性があります。報復不倫は一瞬の満足感をもたらすかもしれませんが、長期的には自分の立場を悪くするだけです。

感情的な決断がもたらす長期的な代償

報復不倫をしてしまった人の多くが、後になって「あのときの自分は冷静ではなかった」と振り返るようです。一時の感情で下した決断が、その後の人生に長く影響を及ぼす可能性があります。

離婚条件が不利になる、親権を失う、社会的信用を失う、といった代償は、一時的な満足感とは比べものにならないほど重いものです。

法的に有利な立場を手放すことになる

配偶者の不倫が先であれば、法的には圧倒的に有利な立場にいます。慰謝料を請求できる、離婚を有利な条件で進められる、親権でも優位に立てる可能性が高い。

しかし、報復不倫をしてしまうと、この有利な立場を自ら手放すことになります。感情的な満足のために、戦略的な優位性を失うのは、あまりにももったいない選択ではないでしょうか。

専門家への相談という選択肢

報復不倫を考えるほど追い詰められているなら、まず専門家に相談することをお勧めします。弁護士に相談すれば、現在の状況で自分がどれだけ有利な立場にいるかが分かります。

カウンセラーに話を聞いてもらえば、感情を整理し、冷静な判断ができるようになるかもしれません。報復不倫という衝動的な行動に走る前に、一度立ち止まって専門家の意見を聞くことが、自分を守ることに繋がります。

もし報復不倫をしてしまったら

すでに報復不倫をしてしまった場合、どうすればよいのでしょうか。

すぐに関係を終わらせる

まず最優先すべきは、不倫関係をすぐに終わらせることです。関係が続けば続くほど、法的な責任は重くなる傾向があります。期間が短い、回数が少ない、という事実は、慰謝料の減額事由になる可能性があります。早期に関係を断つことで、被害を最小限に抑えられるかもしれません。

弁護士に早急に相談

報復不倫が発覚してしまった、または発覚しそうな場合は、早急に弁護士に相談すべきです。弁護士は、現在の状況を分析し、最善の対応策をアドバイスしてくれます。配偶者との交渉、相手配偶者からの慰謝料請求への対応、離婚手続きなど、複雑な問題を整理してくれるでしょう。早い段階で専門家が介入することで、事態の悪化を防げる可能性が高まります。

配偶者との関係修復か離婚か

報復不倫をしてしまった後、配偶者との関係をどうするか決断する必要があります。関係を修復したいのであれば、誠実に謝罪し、二度と同じ過ちを繰り返さないと約束することが必要でしょう。

離婚を望むのであれば、お互いの不倫を含めて、できるだけ穏便に条件を話し合うことが賢明かもしれません。どちらの選択をするにしても、感情的にならず、冷静に進めることが重要です。

まとめ:負の連鎖を断ち切る勇気

報復不倫は、一見すると「公平」な仕返しのように思えるかもしれません。しかし、実際には自分自身を傷つけ、法的に不利な立場に追い込む行為です。配偶者の不倫という裏切りで受けた傷は深いものですが、その傷を癒す方法は、同じ過ちを犯すことではないはずです。

怒りや悲しみ、孤独といった感情は、理解できるものです。それらの感情を否定する必要はありません。しかし、その感情に支配されて衝動的な行動をとることは、長期的には自分を守ることにならないのです。

もし今、報復不倫を考えているなら、一度立ち止まって考えてみてください。本当に必要なのは、仕返しではなく、自分自身の幸せを取り戻すことではないでしょうか。

そのためには、法的に有利な立場を保ち、冷静に離婚を進めるか、あるいは関係修復に向けて建設的な努力をする方が、はるかに賢明な選択かもしれません。負の連鎖を断ち切る勇気を持つことが、自分自身を守り、新しい人生への第一歩となるのではないでしょうか。

 

弁護士 青木佑馬
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